お互いを尊重する「ユマニチュード」という考え方
お互いを尊重することで介護は成り立つ
ユマニチュードとは?
ユマニチュードとはフランス人の体育教師、イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが1979年に考案した高齢者ケアの手法です。当時の高齢者ケアはベッドに寝かされたまま機械的に介助する、「介護する側」の都合ばかりが優先されたケアでした。じっとしていられない高齢者には拘束具で身体を固定し身動きできないようにしていましたが、そのような状態では声かけも十分なものではありません。そのような状態を目の当たりにしたジネストが高齢者ケアの改善に取り組み、「ユマニチュード」という手法が考え出されたのです。
ユマニチュードは「介護する側」と「介護される側」、お互いがどのような存在かを問う哲学とそれに準じた身体介助のテクニックから成り立っています。介護する側はまず相手が自分の存在を認識するように、態度や言動で示していきます。思うような反応が得られなくても相手を尊重しながら常にコミュニケーションを取ることを心がけることが大切です。
基本となるアクション
ユマニチュードの基本となるアクションは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つです。どれも日常生活の介護に必要不可欠なものばかりですが、もしこれまでのやり方と違うようなら見直してみることも必要です。それぞれのアクションについて、具体的に説明していきます。
見る
まずは相手の目を真正面から見つめましょう。「あなたに関心があります」という意思表示にもなりますが、あまり顔を近づけ過ぎると嫌悪感を示し、拒否されてしまうこともあるので注意しましょう。また、相手の目を見るといっても見下すように見るのはよくありません。同じ目線で相手の目を見るようにしましょう。
話す
相手に伝えたい事をゆっくりと優しく話しかけましょう。耳が遠い高齢者には大きな声で話さなければなりませんが、あくまで大きな声で話すことです。怒鳴ると心理的なプレッシャーを与えてしまうため注意しましょう。相手から反応が返ってこなくても、常にメッセージを発信し続けることがポイントです。
触れる
身体介護は相手の身体に触れるケアです。他人に触られることに不快感を示す人もいるため、衣服の着脱時は身体に触れる前に必ず声をかけ、相手の身体に触るときはゆっくりと手のひらから触れるようにしましょう。
立つ
動かなければ身体機能は弱っていきます。寝たきりになるのを防ぐためにも、立ったり歩いたりする時間を作りましょう。歩行器や手すりに掴まって立つなど、1日の中で数回、立つ機会を設けましょう。立つことができれば歯磨きや洗面などもスムーズになるため、介護する側の負担も減ります。